AI の判断基準とは、AI エージェントが迷った場面で従う、人が過去に決めた答えの集まりです。

知りたい事答え
AI の判断基準は、最初に全部書けるか書けません。株式会社命の判断の記録では、判定のうち基準(答え)になったのは 24.1% で、67.5% はまだ決着していない材料でした(社の実測 2026-10-20)。→ 実測を見る
基準は、どんな形で書くか「丁寧に」のような感覚の文ではなく、場面と答えを 1 行ずつ残し、決着の印を付けます。→ 基準の単位
基準が無い場面で、AI エージェントはどう動くか過去の答えを引き、無ければ自分の予測を書いてから人に聞きます。返ってきた答えが次の基準になります。→ 書き方の 3 段

出典: 社の実測 2026-10-20(株式会社命の判断の記録のうち、種別が「判定」の行の決着の印の割合)。

感覚で書いた基準は、AI エージェントには使えない

AI に判断を任せようとすると、多くの会社はまず「判断基準」の文書を作ります。「お客様第一で」「迷ったら慎重に」「品質を優先する」。けれども、こうした文は人が読めば分かった気になれても、目の前の一件をどちらに決めるかまでは決めてくれません。慎重とはどこまでか、品質と納期がぶつかったらどちらか。AI エージェントは、その線を文から引けないまま、毎回人に聞くか、勝手に解釈して外すかのどちらかになります。

私たちは、判断の基準を「考え方の文」ではなく、実際の場面で人が出した答えとして持つことにしています。ある場面で社長がこう決めた、という 1 行は、同じ場面が来たときにそのまま当てられます。基準は書いて作る物ではなく、答えが貯まってできる物、という置き方です。

基準の単位は「場面と答え」の 1 行

株式会社命では、AI エージェントが判断を仰いだ・失敗した・躓いた・人の手を借りたときに、判断の記録へ 1 行ずつ書きます。列は、日付・領域・席・型・対象・予測・見た物・答え・一致・決着の印・種別です。中でも基準づくりに効くのは次の三つです。

  • 型 — どの種類の判断か。同じ名前で書き続けるので、後から同じ場面を引けます。
  • 予測 — 人に聞く前に、AI エージェントが自分ならこう決めると書いた答え。
  • 決着の印 — その行が基準になったのか、まだ材料なのかを示す印。

決着の印は、行がどこまで基準として使えるかを分けるためにあります。

決着の印意味AI エージェントの動き
答え社長が答えを決めた同じ場面では聞かずに、これに従う
任せるこの型そのものを任せた聞かずに動いて、事後に知らせる
その場限りその一件だけの決着次の場面の基準にはしない
(空)まだ決着していない材料として貯めておき、同じ型の予測の手がかりにする

「答え」と「任せる」の違いは、基準の幅です。「答え」は一つの場面の決め方を固め、「任せる」はその型の判断ごと AI エージェントに渡します。

判断の 4 分の 1 ほどが基準になった — 株式会社命の実測

判断の記録のうち、種別が「判定」(AI エージェントが人に判断を仰いだ行)の行を、決着の印ごとに数えました。

決着の印判定の行に占める割合
答え(同じ場面では聞かずに従う)24.1%
任せる(聞かずに動いて事後に知らせる)1.2%
その場限りの決着3.1%
まだ決着していない(材料として貯まっている)67.5%

出典: 社の実測 2026-10-20(株式会社命の判断の記録・種別「判定」の行)。表には四つの印だけを挙げたので、足しても 100% にはなりません。

AI エージェントが仰いだ判断のうち、「答え」として基準になったのは 24.1% でした(社の実測 2026-10-20)。およそ 4 分の 1 の場面では、AI エージェントは次から同じ場面で聞かずに、その答えに従います。

一方で、まだ決着していない行が 67.5% あります(社の実測 2026-10-20)。7 割近くの判断は、基準になる前の材料として貯まっている、ということです。型ごと任せる「任せる」の印は 1.2% にとどまり(社の実測 2026-10-20)、その一件だけで終わった決着は 3.1% でした(社の実測 2026-10-20)。

この数字から言えるのは、基準は最初から全部は書けないということです。運用を始める前に判断基準の文書を書き切ろうとしても、実際に判断を仰がれた場面のうち、答えとして固まるのは一部です。基準は、運用しながら 1 行ずつ増やしていく物だと考えた方が、実際の姿に合っています。

AI の判断基準の書き方 — 3 段

基準を感覚で書かないために、AI エージェントの側の動きを 3 段に決めておきます。全体の回し方は判断まで AI に任せる会社の意思決定の回し方にまとめています。ここでは、基準がどう書き足されていくかに絞ります。

  1. 迷った場面を、型の名前で引く

    判断に迷ったら、まず判断の記録から「答え」「任せる」の印の付いた行を、同じ型か同じ領域で引きます。在れば従い、聞きません。型の名前を一度決めたら変えないのは、この引き当てを効かせるためです。

  2. 答えが無ければ、自分の予測を書いてから聞く

    印の付いた行が無いときは、同じ型の過去の行を手がかりに「私はこう決めます。理由はこの行と同じ形だからです」と予測を書いてから人に聞きます。「どうしますか」とだけ聞くと、人は一から考え直すことになり、答えも基準の形で残りません。

  3. 返ってきた答えを 1 行にし、印を付ける

    人の答えは、予測と並べて 1 行に残します。同じ場面でも通用する答えなら「答え」の印を付け、次から聞かずに従えるようにします。その一件だけの答えなら、その場限りとして基準から外します。

この 3 段を回すと、人が答えるたびに基準が 1 行ずつ増えます。人は基準の文書を書くのではなく、目の前の一件に答えるだけです。書く手間は AI エージェントの側が持ちます。

決着していない 7 割は、捨てずに材料として貯める

決着していない行が多いと、基準づくりが進んでいないように見えます。けれども、この行は無駄ではありません。同じ型の行が貯まると、AI エージェントは予測を書くときの手がかりを持てますし、予測が合い続けた型は「答え」や「任せる」の印を付ける候補になります。予測と答えの合い方を数える話は、暗黙知を AI に渡す記事で書いています。

ただし、どれだけ貯まっても AI エージェントに渡さない判断もあります。人が決める事は先に線として決めてあり、その線は基準の行が増えても動きません。どの事を人に残しているかは、意思決定の回し方の記事にまとめています。

よくある質問

AI の判断基準は、どうやって決めればよいですか?

考え方の文として先に書き切るのではなく、AI エージェントが迷った場面で人が出した答えを 1 行ずつ残し、同じ場面で使える答えに印を付けて基準にします。基準は運用しながら増やしていく物です。

判断基準を最初に全部書いておけば、AI は聞かずに動けますか?

動けません。株式会社命でも、判断を仰がれた場面のうち基準(答え)になったのは 24.1% で、67.5% はまだ決着していませんでした(社の実測 2026-10-20)。書き切れない場面は、予測を書いてから聞く形で埋めていきます。

AI に基準が無い場面では、どう動かせばよいですか?

過去の同じ型の判断を引き、それを手がかりに自分の予測を書いてから人に聞かせます。人の答えは予測と並べて残し、次の基準にします。

「答え」と「任せる」は何が違いますか?

「答え」は一つの場面の決め方を固める印で、同じ場面が来たら聞かずに従います。「任せる」はその型の判断ごと渡す印で、聞かずに動いて事後に知らせます。株式会社命では「任せる」の印は判定の 1.2% でした(社の実測 2026-10-20)。

出典

  • 株式会社命の判断の記録(2026-10-20 に全行を数えた)— 種別が「判定」の行の、決着の印ごとの割合(社の実測 2026-10-20)
  • 自社の実測 — 会社全体の数字と数え方