意思決定ログとは、判断のたびに予測と答えを一行で並べ、当たり外れを後で数えられるようにした記録です。

知りたい事答え
一行に何を書くか判断の型・予測・見た物・答え・一致を同じ行に並べる。予測は答えより先に書く(一行の列)
実際に何が多く書かれるか判定(判断を仰いだ・下した)が 74.3%、躓きが 21.5%、失敗が 2.9%、人の手が要ったが 1.2%。失敗より躓きのほうがずっと多い(行の種別の割合)
付け方でいちばん大事な事判断の型の名前を一度決めたら変えない。型の 71.4% は 1 回しか出ておらず、名前が揃わないと当たり外れを数えられない(型の名前の決め方)

出典: 社の実測 2026-10-20(株式会社命の判断の記録の全行)

人が後で書く記録と、AI エージェントがその場で書く記録

意思決定の記録と聞くと、多くの人は ADR(アーキテクチャの決定の記録)のような文書を思い浮かべます。大きな決定のあとに、人が背景・選んだ案・捨てた案をまとめて書く物です。読み返して「なぜこうしたか」を思い出すには向いていますが、一つ一つが重く、数が貯まりにくい作りです。

株式会社命の判断の記録は、向きが違います。書くのは人ではなく AI エージェントで、判断を仰いだとき・下したとき・躓いたとき・失敗したとき・人の手を借りたときに、その場で一行ずつ足していきます。目的も「思い出す」ではなく「数える」です。AI エージェントの読みがどれだけ当たっているかを、型ごとに数えるために付けています。

見る所人が書く決定の文書(ADR など)AI エージェントが書く意思決定ログ
書く人決めた人や担当者判断に当たった AI エージェント
書く時大きな決定のあと判断・躓き・失敗・人の手が要った、その場
一回の量背景から結論まで数段落決まった列を埋める一行
予測書かないことが多い答えより先に、必ず書く
使い道読み返して理由を思い出す型ごとに当たり外れを数え、任せる所を決める

一行の列 — 予測と答えを同じ行に置く

一行の列は次の通りです。肝は「予測」「答え」「一致」が隣り合っていることと、「型」の列があることです。予測と答えが別の場所にあると、後から突き合わせる手間がかかり、数えるのをやめてしまいます。

列何を書くか
日付その行を書いた日
領域どの仕事の範囲の判断か(経理・販売・制作など)
席どの AI エージェントが書いたか
型何の判断かを <領域>-<何の判断> の形で付けた名前。当たり外れはこの名前ごとに数える
対象判断の向き先(どの書類・どの頁など)
予測答えを聞く前に、AI エージェントが「こう決まるはず」と書いた物
見た物予測の拠り所にした前の行や資料
答え実際に決まった中身
一致予測と答えが合ったか
焼き先(決着の印)決まった事をどこへ書き戻したか。書き戻した先が在れば、その行は決着したと見る
種別判定・躓き・失敗・人の手が要った、のどれか
層行を後で振り分けるための区分

この記事に載せるのは器の列と数え方だけです。実際の行(何をどう決めたか)は社内の判断なので載せません。

実際に書かれた行 — 四分の三は判断そのもの

2026-10-20 に、株式会社命の判断の記録を全行数え、種別の割合を出しました。

種別どんな行か全行に占める割合
判定判断を仰いだ、または下した74.3%
躓き失敗までは行かないが、手が止まった・回り道をした21.5%
失敗やった事が間違っていた2.9%
人の手が要ったAI エージェントだけでは進めず、人に頼んだ1.2%

出典: 社の実測 2026-10-20(株式会社命の判断の記録の全行)。割合は四捨五入しているため、足して 100% になりません。

読み取れる事は二つです。一つ目に、記録の 74.3% は判定、つまり判断そのものの行でした(社の実測 2026-10-20)。意思決定ログは「事故の記録」ではなく、日々の判断を貯める器として使われています。予測と答えを並べて数えられるのは、この判定の行が厚いからです。

二つ目に、失敗の 2.9% に対して躓きは 21.5% と、ずっと多く書かれています(社の実測 2026-10-20)。躓きは失敗の手前で、放っておけば次の失敗の芽になります。失敗だけを書く決まりにしていたら、この五分の一の行は残りませんでした。付け方としては「失敗したら書く」ではなく「手が止まったら書く」に線を引くほうが、学べる行が貯まります。

人の手が要った行がどんな原因で起きたかは、人の手が要った回の原因の記事で別に見ています。

型の名前は一度決めたら変えない — 7 割は一度しか出ていない

当たり外れを数えるには、同じ判断が同じ型の名前で何度も出てくる必要があります。ところが数えてみると、型の名前のうち 1 回しか出ていない物が 71.4% ありました(社の実測 2026-10-20)。

1 回しか出ていない型は、当たり外れを数えようがありません。その中には、本当に一度きりの判断と、前と同じ判断なのに別の名前が付いてしまった物とが混ざりえますが、名前を見ただけでは分けられません。同じ判断に別の名前を付けると、当たっていた回も外れていた回も別々の型に散り、どちらも数えられなくなります。

そこで付け方の要点は次の三つです。

  • 名前の形を固定する — <領域>-<何の判断> の形に揃えます。誰が書いても同じ形になるようにするためです。
  • 新しい名前を作る前に、前の名前を引く — AI エージェントは行を書く前に、同じ領域の既にある型の名前を見て、当てはまる物が在ればそれを使います。
  • 一度決めた名前は変えない — 言い回しが気になっても書き換えません。名前を変えると、それまでの行と新しい行がつながらなくなります。

当たり外れの数え方

数え方は単純です。型の名前ごとに、予測を書いた行を集め、「一致」の列が合っている行の割合を出します。型ごとに分けて数えるのは、判断の種類によって AI エージェントの読みの当たりやすさが違うからです。

  1. 型ごとに行を集める

    同じ型の名前を持つ行のうち、予測が書かれている行だけを取ります。

  2. 一致の割合を出す

    予測と答えが合った行の割合を、型ごとに出します。

  3. 決着していない行を見る

    焼き先(決着の印)が空いている行は、決まった事がまだどこにも書き戻されていません。数えるのと同時に、書き戻し漏れを拾います。

株式会社命で、予測と答えがどれだけ合ったかの割合は、暗黙知を AI に渡す記事で出しています。続けて当たった型が、AI エージェントに判断を任せる候補になります。人が残す判断と任せる判断の線の引き方は、判断まで AI に任せる会社の意思決定の回し方にまとめています。

意思決定ログを付け始める順番

  1. 列を先に決める

    少なくとも型・予測・答え・一致・種別の五つを持たせます。後から列を足すと、前の行と比べられなくなります。

  2. 型の名前の形を決める

    <領域>-<何の判断> のように形を一つに決め、AI エージェントには新しい名前を作る前に既にある名前を引かせます。

  3. 予測を答えより先に書かせる

    答えを聞いた後に予測を書くと、必ず当たります。予測の列は、聞く前に埋まっている事を決まりにします。

  4. 躓きも書かせる

    失敗だけでなく、手が止まった所も一行残させます。

  5. 型ごとに数える

    行が貯まったら型ごとの一致の割合を出し、当たり続けた型から任せていきます。

会社全体の実行の数字は自社の実測の頁にまとめています。

よくある質問

意思決定ログには何を書けばよいですか?

一回の判断を一行にし、判断の型・予測・見た物・答え・一致を同じ行に並べます。予測は答えを聞く前に書きます。こうしておくと、後で型ごとに当たり外れを数えられます。

ADR と意思決定ログは何が違いますか?

ADR は、大きな決定のあとに人が背景と理由を文書にまとめ、読み返して思い出すための物です。ここで書いた意思決定ログは、AI エージェントが判断のたびに一行ずつ書き、当たり外れを数えるための物です。

失敗だけを記録すれば足りますか?

足りません。株式会社命の記録では、失敗の行が 2.9% だったのに対し、手が止まった躓きの行は 21.5% ありました(社の実測 2026-10-20)。躓きは次の失敗の芽なので、手が止まった所も書くほうが学べる行が貯まります。

判断の型の名前はどう付ければよいですか?

<領域>-<何の判断> のように形を一つに決め、一度決めた名前は変えません。株式会社命では型の 71.4% が 1 回しか出ておらず(社の実測 2026-10-20)、名前が揃わないと当たり外れを数えられないからです。

意思決定ログは誰が付けるのですか?

株式会社命では、判断に当たった AI エージェント自身がその場で付けます。人は答えを返すだけで、行を書く手間は持ちません。

出典

  • 株式会社命の判断の記録(2026-10-20 に全行を数えた)— 行の種別の割合と、1 回しか出ていない型の割合(社の実測 2026-10-20)
  • 暗黙知を AI に渡すには — 予測と答えの一致率
  • 自社の実測 — 会社全体の数字と数え方